3.准秩父観音霊場の観音さま

 「観音さま」は、正式には「観世音菩薩」のことで、「世音を観ずる菩薩」、即ち、悩み苦しむ人々の救いを求める声や姿に感応し、それぞれに自在に姿を変じて手を差し伸べる最高位の仏道修行者とでも言えます。仏界に列する力と格を有しながらも、敢えてこの現実の世界に在って、悩み苦しむ人が一人たりともいなくなるまで、正に"漏れこぼしなく、間違いなく救う"という誓願をおのれ自身に立てて我々に寄り添い、どこまでも一緒に共に仏道を歩んでいってくださる先達と捉えておきましょう。 「観世音菩薩」自体については、「法華経」の「観世音菩薩普門品」(観音経)のなかに様々な寓意を以って詳しく述べられています。法華経は、紀元400年頃に鳩摩羅汁(クマーラジーバ)という西域の僧によってサンスクリット語から漢語に翻訳され 中国に広まりました。観音経では、「観音さま」は自在に姿をかえ、七観音のほか、33の姿に身を変えて(三十三応現身)救済に現れると説かれています。 日本では、538年に仏教が伝えられてほどなく観音信仰が伝わり、聖徳太子の時代を経て法隆寺の救世観音や、百済観音などの正観音菩薩像が造られました。奈良時代以降(700年〜)には、多くの変化観音像が造られました。日本の観音信仰は1400年以上にわたる歴史を携えています。 次に、七観音について簡単に説明します。

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  • 正(聖)観世音菩薩
  •  普通、「観音菩薩」というときは正観世音菩薩をさす。あらゆる観音像の正しい姿にして、根本の像。餓鬼界を教化の対象とし、身は白肉色にして、色のついた軽い絹の衣をまとい、頭上に無量寿仏をいただき、瓔珞(ようらく:珠玉などを糸でつないだ装身具)をつけ、手には未開敷蓮華(蓮華のつぼみ)、宝珠、水瓶などを持っておられる場合もある。

  • 十一面観世音菩薩
  •  闘争をこととする阿修羅界を救済し、除病、滅罪、求福などの祈願を受け入れる。頭上の各面に慈悲、忿怒など併せて11相を示す。前3面は慈悲の相で「善」なる衆生に対し、左の3面は忿怒の相で「悪」の衆生に対し、右の3面は微笑の相で「浄業」の衆生を励まし、後ろの1面は暴笑の相で善悪雑乱の衆生に対す。頂上の1相は仏面で、大乗の修行者に対するもの。なお、本面を加えて11面とするもの、本面以外に11面をもつものがあり、その顔相や位置には種々の変化がある。

  • 千手(千眼)観世音菩薩
  •  中央の2手を除き、他手は慈悲をもって左右合わせて40手、1手ごとに25界への救済をされ、千の慈眼と千の慈手をもって、自由闊達の働きをし、地獄の苦悩を救い、所願成就、産生平穏を司る。

  • 如意輪観世音菩薩
  •  「福」と「智」の2徳をもって、意のままに衆生の欲求を満足せしめ、如意宝珠の活動をされる天界救済の観世音である。一面にして6手をもち、左の1手は光明山手で下につき、2手に蓮華、3手に法輪をもっている。右の1手は思惟手、2手は如意宝珠、3手に念珠をもっている。6手はそれぞれ、六道(地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上)を救う象徴。

  • 馬頭観世音菩薩
  •  恐ろしい忿怒の形相で、威力を持って救済の手段とされている。頭上にいただく馬頭は、インドの理想的帝王である転輪王の宝馬が須弥山の四方を駆けまわるように大威勢をもって大慈悲を行い給うとされる。耕作運搬に働く牛馬を保護する功徳をもち、畜生界をまもる動物の守護神である。



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  • 不空羂索(けんじゃく)観音菩薩
  •  「不空」は、この菩薩を信じるもののすべての願いは空しからず、「羂索」は自らの羂索(投げ縄)で逃すことなく救う、という意味をもっている。1面8手の観音像が多い。

  • 准胝(じゅんてい)観音菩薩
  •  「准胝」とは、サンスクリット語「チュンダー」の音訳で、清浄を意味するという。観音ではなく、仏母とも言われる。8、14、18 など、多数の手をもち、熱心にお唱えすれば、すべての悪業、重罪が消え去り、来世で仏にあい、すべての望みがかなうともいわれる。

  • 以上の七観音のうち、准秩父観音霊場の34札所には、最初の五観音様のうちのどちらかがまつられています。また、法華経の三十三応現身に数を合わせて日本独自に編み出された三十三変化観音のうち、楊柳観音をおまつりする一札所があります。

  • 楊柳観世音菩薩
  •  薬王観音とも呼ばれ、あらゆる病を除く菩薩とされている。その慈悲心が衆生の祈願に応じ、あたかも柳の春風になびくようなところからこの名号がでたのであり、右手に柳の枝をもっておられる。

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